NHKの番組「100分de名著」の『千の顔をもつ英雄』の書籍版を読んでみたところ、その著者の佐宗邦威さんがネイティブアメリカンであるラコタ族の「スウェット・ロッジ」というイニシエーションに参加したことについて書かれていました。今回の記事ではこちらを取り上げます。
佐宗邦威さんのスウェット・ロッジ体験
NHKの「100分de名著」にてジョーゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』が取り上げられていたと知って、書籍版を手に取って読みました。
100分de名著 キャンベル『千の顔をもつ英雄』 2024年7月 | NHK出版こちらの題材となっている『千の顔をもつ英雄』は、ヒーローズジャーニー(英雄物語)についての書籍のまさに代表格です。また、この回の担当者は『理念経営2.0』の著者の佐宗邦威さんです。というわけで、是非とも内容を知りたいと思い、まず書籍版を手に取ってみました。
簡単に流し読みをして、佐宗さんご自身が体験したエピソードに目が留まりました。以下に引用をします。
人生を大きく変えるようなイニシエーションを経験したいと思っても、それを自分で設定することはできないのではないか。そう考える人も多いでしょう。しかし、イニシエーションが「仮想的な死」であるならば、意図的に「死」や「極限」に類する状況を作り出し、みずからそこに身を置くことで、能動的にイニシエーションに臨むことも不可能ではありません。
69ページより。
私はかつて、アメリカ先住民のラコタ族に伝わる「スウェット・ロッジ」という儀式に参加したことがあります。女性の胎内を模したという高さが一メートルもない狭いスペースに十三人が寄り添って座り、真っ暗な空間で、最高で百三十度に近い熱気を浴び続けるという凄絶な儀式です。自身が普段悩んでいることを吐き出し、被っている仮面(=ペルソナ)を剥がして、ありのままの姿をさらす、それをその場の(見知らぬ者同士の)仲間と共有するという重要なイベント(=試練)です。
仲間と熱風を浴び、苛烈な熱さに耐えるなかで、「自分はこういう人間であらねばならない」といった理性の囚われが吹き飛び、今ここにみずからが在ることをありがたいと感じるようになる。つまりスウェット・ロッジは、自分自身が無意識のうちに「生まれ変わる」ことを経験できるイベントであると言えるでしょう(女性の胎内を模した空間で行われるのは、「一度死に、蘇る」ことを象徴しているのだと考えられます)。
70ページより。
今回の記事では、このスウェット・ロッジのことについて簡単に書いていきます。
ラコタ族の儀式「スウェット・ロッジ」
アメリカ先住民(ネイティブアメリカン)のラコタ族と言えば、「少年が大人の男性になるためのイニシエーション」としてヴィジョン・クエストの風習を持っている部族である、と思い当たります。
スウェット・ロッジでもヴィジョン・クエストでも、どちらでも重要である点は、自分の身体を意識しなければならない状態を経験する、ということでしょう。身体的に大きな負荷をかけることで、その時の「いま・ここ」の身体のこと以外は何も考えることができない状況をつくっています。そして、その時に心で感じたことこそが、本当に自分自身を表現する心の在り様です。スウェット・ロッジで何をやるのかをさらっと聞くと、まるで身体を鍛えることが目的であるかのようにも思えます。しかし、実際は、身体の経験を通じて心の変容を促すものです。本当に心に必要な変容を起こすために、敢えて身体に重点を置いた試練を実施している、と考えて良いでしょう。
現代社会にて自分自身に変容を起こす
上記の書籍から再度の引用をします。スウェット・ロッジについて書かれていた先ほどの引用箇所の続きです。
人は、慣れ親しんだ、よく知っている世界に安住しがちで、だから先人たちは、自分たちを成長させるためにさまざまな儀式を用意してきました。私たちは、儀式のない時代に生きるからこそ、先人の営みを範として、みずからを変えるために自前の「イニシエーション」を積極的に取り入れるべきなのではないでしょうか。
その鍵は、「自分の限界に挑戦する」ところにあると思います。何をきっかけにするか、何に取り組むかは人それぞれだと思いますが、「召命」のサインを探すのみならず、自分から変容のきっかけを作り出すことにも挑んでみてください。
71ページより。
ここで、佐宗さんは、ラコタ族のスウェット・ロッジのようなイニシエーションで成されることと同じことを、この時代にも取り入れるべきと述べています。少なくとも男性の精神的な成熟については、私はこのことに同感です。少なくとも男性に限っては、一定の年齢に達したり、一定量の収入を得たり、何らかの所有物を得ることでは、本当に重要な成熟が得られるわけではない。だからこそ、世界のあらゆる文化圏において、あらゆる時代にて、少年が大人の男性になるための試練(イニシエーション)が行われてきていた。しかし、現代社会ではそのことが忘れられてしまったため、内面的には少年のままである男性が多くなってしまっている。本ブログで「少年が大人の男性になるためのイニシエーション」について取り上げた時に、何度か、このような考えを紹介してきました。そして、私自身も同じように考え始めています。
本質的な変容のために「生まれ変わる」経験をする
私が「異性関係の失敗をきっかけにして危機的な状況を味わった。そして、それを何とかするために『男性が良い生き方を取り戻す』ための北米のプログラムに参加をした」という話をすると、「それはつまり、今、くっすは良い異性関係を持てるように努力しているってこと?」という反応を受けることがあります。それについて、部分的には同意します。そして、もちろん、「良い異性関係を持つことだけが目的だ」とは捉えないでほしいです*1。私の考えでは、「良い異性関係を持つこと」というのは、表面的に現れる結果の1つです。深層的な変化を遂げた結果として、表面的な変化も起こる、というのであれば良いです。しかし、深層的には何も変わらず表面的にだけ変化が起こっている、というのは、あまり望ましくはない、と私には思われます。
ここで、深層的な変化とは、本質的な変容とも言い換えられます。それは、「生まれ変わる」経験によって得られることもあります。佐宗さんは、スウェット・ロッジの儀式に参加することによって、そのような「生まれ変わる」経験をしました。やはり、現代の男性が本当に精神的に成熟をしていくためには、このような機会が必要なのではないか、と私には感じられます。もちろん、表面的な部分だけを真似て、危険な「偽のイニシエーション」をするべきではありません。それを考慮しながらも、本当に必要な変容を実現できる機会を増やしていく、ということが必要と考えます。そして、私はそれをやりたいです。そのような本質的な変容を経ることによって結果的に良い異性関係を持つ人が増えるのであるなら、それは良いことだな、と感じます。
お読み下さり、ありがとうございました。
*1:「ナイスガイ」からどのように変わるか、ということについて最近に調べている限りでも、本当に同じことを感じます。
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