リーダーシップをテーマの1つとする団体にて、組織のミッション・ビジョン・バリュー・パーパス(以下、MVVP*1とも表記します)を考えています。しかし、どのようなMVVPを設定すると良いのか、なかなか難しいです。
そこで、私が個人として取り組んでいる「男性における精神的な成熟」の活動を1つの事業であると見なして、MVVPを考えることにしました。規模としてはこちらの方が明らかに小さいので、その分、簡単に完成形を描くことができます。今後に変化していく可能性はあるとはいえ、「ひとまずの完成形」をつくることには意義があると考えました。ここで取り組んでいるテーマが何であるかを伝えやすくなりますし、前述の団体でMVVPを考える時にもきっと役立つからです。
「男性における精神的な成熟」のMVVP
ミッション:
・「男性における精神的な成熟」を得たい人に理解と方法を共有する
・成員が男性としての精神的な成熟を達成する
ビジョン:
・男性同士で会話をすることが、現在の女性同士が会話をするのと同じくらいに当たり前となっている世の中
バリュー:
・男性の問題を男性が解決する
・多様な男性らしさを認める
・男性以外の存在(女性など)を尊重する
パーパス:
・男性の精神的な成熟が実現されるのを促進する
・「男性における精神的な成熟」という捉え方が重要であると示す
ここでのMVVPの定義
MVVPのここでの定義は、佐宗邦威『理念経営2.0』と小杉俊哉『リーダーのように組織で働く』を参考にしつつ、独自に考えたものです。
ミッションの定義:
・成員または組織がその活動および事業によって達成すること
・内部的な使命
・内部的にそれをやらなければならないのはなぜか
ビジョンの定義:
・その活動および事業によって近い未来に実現される像および在り方
バリューの定義:
・成員または組織がその活動および事業をやるにあたって重要視する原則
・成員同士および成員と組織との関係において守るべきこと
パーパスの定義:
・成員または組織が社会と世界において果たす役割
・外部的な存在意義
・外部的に成員または組織が存在しなければならないのはなぜか
MVVPのそれぞれについての説明
以下、ミッション・ビジョン・バリュー・パーパスのそれぞれについて説明を加えます。
ミッション
ミッション:
・「男性における精神的な成熟」を得たい人に理解と方法を共有する
・成員が男性としての精神的な成熟を達成する
ミッションの定義:
・成員または組織がその活動および事業によって達成すること
・内部的な使命
・内部的にそれをやらなければならないのはなぜか
ミッションは、やはり「使命」であると考えました。
自分(自分たち)は何をやるのか。
および、自分(自分たち)はなぜそれをやるのか。
ここでは、「なぜやるのか」という理由のうち、特に内部的な要因を重視した定義としました。内側から湧き起こってくる感情または意思、といったイメージです。
何をやるのか、という観点では、
・「男性における精神的な成熟」を得たい人に理解と方法を共有する
となります。
「男性仁おける精神的な成熟」が何であるかを共有する。そして、それをどのように達成するのかも共有する。これらを、望む人に宛てて活動をおこなう。このようになります。
なぜやるのか、という観点では、
・成員が男性としての精神的な成熟を達成する
となります。
これは、やはり、私がそれを強く望んでいるから、ということが最も大きな理由です。もし、この活動が組織的におこなわれるのでしたら、同じような望みを持つ人が成員となっている可能性が高いです。
ビジョン
ビジョン:
・男性同士で会話をすることが、現在の女性同士が会話をするのと同じくらいに当たり前となっている世の中
ビジョンの定義:
・その活動および事業によって近い未来に実現される像および在り方
ビジョンは「像」です。視覚的に画像または映像によって思い描けるもの、と捉えます。数値的な達成目標とは区別をします。
そのビジョンにあたるものとして、
・男性同士で会話をすることが、現在の女性同士が会話をするのと同じくらいに当たり前となっている世の中
を設定しました。
これまでの記事で何度か言及してきましたように、男性同士の関係性は、本来はもっと重要なのではないか、と私は考えています。それを踏まえて、「女性同士がよく会話をするのは自然と捉えられている。男性同士も、それくらいよく会話をするのが実は自然なのではないか。だから、そうなっている像を描いて、そのような在り方を実現させよう」と考えました。「男性が会話する量と女性の会話する量に差があるのは、脳の構造の違いによるものだ。生物学的な差異なのだ」という主張もあり得ますが、ここでは、それとは異なる捉え方をしたいです。なお、「男性同士の会話」という要素に加えて、「年長の男性が若い男性の人生をサポートするのが自然となっていること」「男性が人生の危機にある時に他の男性がサポートするのが自然となっていること」という要素も想像の近いものとして考えています。上記では、特に像が描きやすいものとして、「男性同士の会話」という在り方を選びました。
バリュー
バリュー:
・男性の問題を男性が解決する
・多様な男性らしさを認める
・男性以外の存在(女性など)を尊重する
バリューの定義:
・成員または組織がその活動および事業をやるにあたって重要視する原則
・成員同士および成員と組織との関係において守るべきこと
バリューは「重要視する原則」「守るべきこと」としました。
活動および事業をやるにあたって、何を原則とするか、何を守るべきか。
成員同士の関係、および、成員と組織との関係において、何を原則とするか、何を守るべきか。
このようなことです。
活動および事業における初めの原則として
・男性の問題を男性が解決する
を想定しました。
男性の本当の苦しみは男性にしか理解できないものである、と私は考えます。それならば、その問題を解決する主体は男性である。その問題を解決したい時に頼るべき相手は男性である。このようなポリシーを表明するものです。まさに原則ですね。
次に挙げたバリューは
・多様な男性らしさを認める
というものです。
これは、私としては想像の部分が大きい要素ではあります。しかし、やはり「男性らしさ」が何かとは、そもそも難しい問題であると言えます。何が男性らしさであって、何が男性らしさではないのか。それを明確に区別する基準または線引きは、永遠に見つからないのではないか。もしそうであるならば、活動および事業をやるにあたり、男性らしさは多様であることを前提とした方が良いでしょう。また、成員が複数いる場合には、それぞれの男性らしさの捉え方は多様になると思われます。多様な男性らしさを認めるということは、原則であり、守るべきことだと言えます。
最後に
・男性以外の存在(女性など)を尊重する
を考えました。
男性が男性の精神的な成熟のために活動をおこなう。これが、本テーマが事業となっていると想定した場合の、端的な事業説明の1つです。その活動にあたっては、男性を尊重することが必要となります。そして、男性以外の存在も尊重することも重要です。これは原則となるべきですし、守るべきことともなるべきです。男性を尊重するという目的のために、男性以外の存在への尊重をやめるべき理由は無いでしょう。男性が精神的に成熟するという目的のために、男性以外の存在が精神的に成熟するのをやめてもらう理由も、やはり無いでしょう。自分(自分たち)も尊重するし、自分たちとは異なる人たちも尊重をする。この考え方が重要である。そのように捉えています。
パーパス
パーパス:
・男性の精神的な成熟が実現されるのを促進する
・「男性における精神的な成熟」という捉え方が重要であると示す
パーパスの定義:
・成員または組織が社会と世界において果たす役割
・外部的な存在意義
・外部的に成員または組織が存在しなければならないのはなぜか
パーパスは、「なぜ存在するのか」を外部的に捉えたもの、と考えました。「なぜやるのか」という点では、ミッションと似ていると私には感じられました。さらに言うと、パーパスとミッションはどう違うのか、うまくわかりませんでした。ここでは、自分なりに定義をしたもので良しとする、と捉えて、「パーパスは外部的な観点を重視したもの」「ミッションは内部的な観点を重視したもの」と区分けをしました。そのようにシンプルに捉えて、MVVPの「ひとまずの完成形」をつくることを優先させました。
作成したパーパスの1つ目は
・男性の精神的な成熟が実現されるのを促進する
です。
このテーマが事業としておこなわれたことによって、「この事業が存在していたから、男性の精神的な成熟が大いに達成されることになった」と捉えられている、という状態を想定しています。外部的な観点から、「この事業が存在していたから、このことが充分に実現された」と思われている、ということです。また、上記の文では、最後は「促進する」という述語を用いました。これは、「男性における精神的な成熟」を実現させる組織・団体・個人は、他にも存在する可能性があるからです。本事業でなければ「男性における精神的な成熟」(または、それに近いこと)を実現できない、というわけではありません。その点を踏まえて、上記のパーパスの文では「促進する」という言葉を使いました。
2つ目は
・「男性における精神的な成熟」という捉え方が重要であると示す
としました。
このテーマが事業としておこなわれている場合、事業として存在しているという事実が、「男性における精神的な成熟」という捉え方が重要であると示す根拠となります。事業として存在しているのは、それが外部的に求められているから。そのように推論できるでしょう*2。ある事業が存在しているという事実が、その事業に一定のニーズがあることを示している。したがって、その事業の基本前提としている捉え方は重要である可能性が示唆される。このように考えられます。
まとめ
以上、「男性における精神的な成熟」というテーマを1つの事業であると見なして作成した、ミッション・ビジョン・バリュー・パーパス(MVVP)をそれぞれに見てきました。初めにも書いた通り、今回の目的は「ひとまずの完成形」をつくることです。私としては、一通りの説明を完成できたことで、誰かに説明する時に役に立つだろうと思います。そして、別団体にてMVVPを作成する際にも役に立つと良いなと考えています。「ひとまずの完成形」であっても、文として表現したことで、「自分としては当然と思っていたが、他の人にとっては当然ではなかったこと」を明らかにできる可能性があります。そういう効果もあると良いなと思います。「ひとまずの完成形」とは、例えるなら、建築物をつくる時の模型みたいなものですね。今後、何かの機会に、本記事を活用したいです。
お読み下さり、ありがとうございました